甲子園は流れ作業

2008年08月13日

夏の甲子園、連日の猛暑(立秋を過ぎたので残暑というべきだろうが、残暑というにはあまりにも暑すぎる)の中展開される熱戦。
しかも観客は超満員。選手としても甲子園出場の経験がある鹿児島実業の宮下正一監督によれば、夏の大会はスタンドのお客さんが白い服を着ているため、フライが上がると保護色のような感じになって、ボールを見失いやすいのだそうだ。

それにお客さんの歓声だってすごいし、アルプスからは吹奏楽の演奏が(ブラスバンドというのは厳密には間違い。このことについては後日機会があればふれよう)容赦なく降ってくる。選手同士の意思疎通だって、よほど声を張り上げなければ難しいことは、素人の我々にも、容易に想像がつく。



こんな独特の雰囲気の中で、日頃の実力を発揮するのは並大抵のことではないが
さらに甲子園ならではの難しさがある。

それは試合進行の速さだ。

甲子園では1試合2時間での進行を求められるという。
そのためとにかく時間に追われるのだ。
たとえば、攻守交替。地方大会の感覚でゆっくりやっていると(地方大会も十分きびきびしていると私には見えるのだが…)審判から「遅いです!」と言われるそうだ。

これは鹿児島工業の中迫俊明監督に聞いた話だが、
甲子園に初めて出ることになったとき、「1試合2時間のつもりで」というアドバイスを、樟南の枦山智博監督から受けたという。

そこで鹿児島工業では、攻撃を終えた選手が守備につく時、どの選手のグラブを誰が手渡すか、担当を決めていたという。とにかくベンチで腰を下ろす余裕もないそうだ。



試合終了後のインタビューは時間配分が決まっている。
まずTV中継のインタビューが3分。NHKが監督にインタビューする隣で、朝日放送が選手へのヒーローインタビューをしている。
その後、新聞や雑誌の取材が13分。
そして我々TVのインタビューが7分。この7分で地方局はもとより、NHKやキー局のニュース用インタビュー、さらには「熱闘甲子園」のインタビューも収録しなければならない。だからこちらも、誰と誰に話を聞くかを決めておいて、その選手がどこにいるか前もって確認した上で、要領よく作業しなければならない。選手だけではなくメディアも流れ作業というわけだ。



すべてが「異空間」の甲子園。選手にとっても、メディアにとっても、その雰囲気に慣れるための事前準備は、いくら周到にしてもしすぎることはない。
(なんだか英作文みたいだな。Can’t …too~だっけ?)

生き続ける鹿実のDNA

2008年08月05日

夏の甲子園、鹿児島実業が西東京・日大鶴ヶ丘に14対1で快勝した。

14安打の猛攻に「21世紀の桜島打線」開花をみる思いがした。
県予選のチーム打率が2割7分8厘だったのでこの打線には正直驚いた。
宮下正一監督は「こんな試合は今回だけですから」と謙そんしていたが。

ところでこの試合、本当の勝因は守備力にあると私はみている。

初回のダブルプレーと、その後のサード・田野尻のファイトあふれる守備は
確かに印象的だが、ここではショート・上坊銀河の再三にわたる好守備についてふれたい。

2回表、上坊は先頭打者の速いゴロを逆シングルで捕球し、アウトとした。
これが外野に抜けていたら日鶴に大量点があったかもしれない。

その上坊、6回には先頭打者の詰まったフライをジャンピングキャッチ!
これだって、外野に抜ければ、相手に攻撃の突破口を開かせる一打となっていたに違いない。

この上坊のプレーに、34年前のあの名シーンがダブった。

34年前の夏にも、鹿実が甲子園にいた。
定岡正二投手を擁し、県勢初のベスト4進出を果たしたあのチームだ。

原辰徳・巨人監督のいた東海大相模との準々決勝。
延長12回裏、セカンド後方へのライナーに飛びついてキャッチし、
サヨナラ負けのピンチを救ったのが、中村 孝二塁手だ。

7月28日、鹿実ナインの壮行会で、鹿児島県高野連の前田 均副会長は
「皆さんには先輩たちのDNAが流れています」と選手を激励した。

中村さんのスーパーキャッチから34年、
上坊のジャンピングキャッチに、そのDNAをみた。

鹿実勝利の翌日、中村 孝さんの長男、亮介くんが、
東東京・関東一高の捕手として甲子園のグラウンドにいた。

3塁アルプスには、鹿児島市から孫の応援にきた祖母のノブさんとともに
息子の応援に声をからす、中村さんの姿があった。

親子二代の甲子園出場と、母校の快勝に、中村さんは満足そうだった。

鹿実、次の対戦は速球派左腕・赤川のいる宮崎商業だ。
前の試合のような大量得点は望めないだろうが、世代を超えて受け継がれた
その守備力で、ぜひ守り勝ってもらいたい。

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古井千佳夫
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